村上かつら短編集1/村上かつら

村上かつら短編集 1 (ビッグコミックス)
噂には聞いていたがこれ程いいとは・・・。ほとんどの作品に共通するのは、悩んだ上で何もしない事とか悩んでる間に結論がでちゃって後悔する事とか、そういうのも大切な経験だっていうテーマです。青臭いなぁと思いつつも、それを曖昧な残酷さでもって瑞々しく描き出していく作品群には「サユリ1号」や現在連載中の「CUE」に対してどちらかと言えば否定的な俺もストレートにやられました。
チンコでもの考えられる人間はそうでない人間が悩みまくりながらやっとのことで保ってる部分を指して「落ち着いてる」とかあまつさえ「冷酷だ」と言うわけですが、そんなことないんだよっていう、でもチンコでもの考えられるからこそ見えてくる世界もあるだろうし、と理解してるつもりでも分かり合えない寂しさを感じる面と見下してる面とが混濁しつつっていうか、んで俺は接点を探す努力のできる寛大さを持ち合わせていないので結局端っこにいる方を選んじゃいますが。何度でも書くけど、精神的不能を才能と思うような図々しい君ではないので。
あとがきにある「過ぎ去った時間はそれが誰のものであっても等距離だ(意訳)」という言葉。歴史の無さに凹みつつ、でも年をとるのも怖いと思ってるこの瞬間もいずれ等距離になるんならそれもいいかなー、と。
とりあえず最近読んだ漫画の中では白眉。