さくっと
- ニッポニアニッポン/阿部和重 (新潮文庫)
- なんとなく読んだ書評から、三島の「金閣寺」や「奔馬」に通ずるテーマを扱った話なのかと思っていて、実際筆者はそれらの作品(とか大江の「セブンティーン」)への共鳴を表明しているようだし、文庫の裏表紙にもそういった内容だと書かれているのだが、俺には視野の偏狭な馬鹿ってヤバイけど笑えるよねー?という「だけ」の提案に感じられた。鴇の交尾に対して、自分が童貞であることを理由にマジ切れする件。妙に切迫した展開に突如として挿入される、
- 自慰行為は日課であり、一日のうち最大のイベントですらあった。
- 瀬川文緒はぺこりと頭を下げた。その姿を目にして、春生の心は大いに萌えた。
なんて悪意に満ち満ちた文。含み笑いが止まらなかったよ。 - 帰着は割と普通だなと思ったら、文庫版に追加された斎藤環の解説がまた−クイーンについて熱く論じ、CCさくらとおジャ魔女を語った挙句、
そう、本作こそは、「天皇萌え」の可能性を示唆した最初の作品でもあったのだ。(原文ママっすよ!)
と結論付けるという−物凄い内容で、読了まで飽きることなく楽しめました。こんな人がいっぱい賞をとる文学(笑)界って、素晴らしいですね。俺、この人好きになれそう。かも。