• クロイツェル・ソナタ  悪魔/トルストイ原卓也訳)  (新潮文庫
    • 性愛どころか人間同士の精神的結合にさえ不信を抱いている節が見受けられ、人生論しか読んだ事がなかった俺は、予想外に辛辣な語り口と合わせて、こんな人だったのかといい意味で驚いた。文体(訳体?)も好みで、楽しめた。
    • しかし、テーマとしてはどうなんだろう。黴臭いと言えなくもないような…。そもそも主人公、直接的な性欲とそれに対する罪悪感が強すぎだよ。作者自身の経験を踏まえてって、マジなんだろうか。ちょっと異常に思える。誇張でないとするならば、単に暇だったのか、俺(ら)が進化なり堕落なりをしているのか、それとも自身や周囲にそういった人がいないせいでそう感じるだけであって、意外とみんなこんな感じなのか。自意識にこそ問題があるようにも思えるが…いずれにせよ、大変そうだなーとどこまでも他人事。
    • (あと、これと関係はないけど、姦淫を禁じる主張には、個人的な同意如何はともかくとして得心出来るだけの理屈が備わっている場合もあるが、その上で自慰を更なる罪と糾弾する際に真っ当な根拠を目にしたことがない気がする。ような。わかんないけど。)