サナ/リカ

なぜ下調べをしておかなかったのだろうか? という後悔よりも、スマステーションで大々的に特集されていたのにヒルズで上映しないのはどう考えてもおかしいよ! という憤懣の方が大きかった。上映スケジュールを前に、”ソウなんかを支持する輩は全員シんだらいい・・・”としばらく呟き続けざるを得なかった。その上、もう一つの一応の目的だったヴィレッジバンガードは、いつの間にかなくなっていた。深刻に項垂れる俺を物陰からチラチラと覗き見てはほくそ笑む誰かの存在を確信した。
間隔を置きながら忍び笑いが聞こえてきたような気のする方向を振り返ってみたが、敵もさる者。背後を視認する頃には、何事もなかったかのように人々は行き交うばかり。ついさっきまで楽しく嘲笑していたのは間違いないのに・・・。今度は心の中で俺を誹っているのだろう、誰もこちらを向こうとさえしない。結局、全く何もせず六本木を後にした。なおその際、乗車口を探すのに手間取っている内に徐々に居たたまれない気持ちになってきて、最終的には麻布十番まで歩いたというエピソードも付け加えておきたい。

そして漠然と新宿に行ったものの、どの映画館で何をやっているかなんて分らないし、昨日の事件のせいか単に俺が気持ち悪いせいか、ただ歩いているだけで警官に二度も尋問を受けた。一度なぞ持ち物を軽くあらためられた。とはいえ、いっそ今から刃物をわざわざ購入してきて差し出してやろうか! という憤懣よりも、下らない卑猥な漫画冊子や玩具を持っていなくてよかった・・・という安堵の方が大きかったが・・・。そういう意味では、気持ち悪い類の人間がやたらとフーコーを好むわけを身をもって理解できたので、貴重な体験だったと客観的に言えなくもないかもしれない。とにかく何もかもが本当に嫌になって、努めて無心で帰宅した。


倦怠感以外に何も残らない一日だった。強いて良かった事と言えば、夕食の刺身が結構おいしかったというぐらいか。


「明日は想像もつかないぐらい良い日に違いないよ☆」